一軒家の自宅に住む老夫婦にとって、将来の悩みの種になりうるのが、“自宅の処分をどうするか”だ。資産性の高い家なら財産として子供たちに相続させられるだろうが、交通の便が悪く、売却も難しい場合、相続放棄も考えられる。では、相続放棄のメリットとデメリットは何か。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【質問】
築30年以上の一戸建てに夫と住んでいます。2人の娘はすでに結婚し、他県に家を建てており、こちらに戻る予定はありません。
私の家は交通の便が悪く、周囲に空き家も多いので、私たち夫婦の死後に売却するのは難しいと思います。そのため、娘たちには相続放棄をしてもらうのも一案かと考えていますが、相続放棄のメリット・デメリット、注意点を教えてください。(富山県・主婦・63才)
【回答】
被相続人が死亡すると、相続が開始し、民法で決まっている相続人(法定相続人)は、被相続人が生前持っていた資産のほか、借金などの負債のすべてを引き継ぐことになります。
相続放棄とは、この被相続人からの資産や負債の引継ぎを拒否する意思表示です。これにより、相続放棄した相続人ははじめから相続人とならなかったものとみなされます。
ここからおわかりのとおり、相続放棄とは、被相続人の死後、法定相続人が行う手続きです。
その方法は、被相続人が死亡したことで自分が相続したことを知ってから3か月以内に、家庭裁判所に相続放棄の申述を申し出て行います。この期間を超えると相続放棄できなくなります。相続人がすることですから、放棄のメリット・デメリットは、相続人の立場で考える必要があります。
